『ブラック・ウィドウ』をガイドブックとする、いながら旅第11シーズンも、この投稿が最終回です。ガブリエルたちは、ナタリーを救い出し、サラディンを倒してアメリカにおけるテロを止めることができるでしょうか。第3部の続き、第60節からいながら旅を続けます。
第3部 世紀の終末(承前)
60 ホワイトハウス
ホワイトハウスのシチュエーション・ルームのスクリーンには、数分前に自爆用ベストを着たふたりの女性がホテルの廊下を歩くところが映っていました。危険性を考慮し、ホテルに突入はせず、正面玄関の外にSWATの狙撃チームと人質救出チームを待機させることが決定され、フランス大統領が撃ち損じないように伝えてと言って、承認します。

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午後8時5分過ぎ、チュニジア人とヨルダン人のふたりが運転する2台のコンテナトラックは、レヴィンズヴィル・ロードからタイソンズ・マクリーン・ドライブに入り、ゆるいスロープを登り、丘のてっぺんで右に曲がり、検問所目がけて蛍光色オレンジのポールを避けようともせず、右手を起爆スイッチにかけながら突進しました。

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〈キー・ブリッジ・マリオット・ホテル〉では、エレベーターを降りてロビーの端まで行ったサフィアは、立ち止まって携帯を見ると、ふたりの女性を見守る皆の予想に反して、ナタリーを伴い、ロビーを戻ってホテルの裏口へ向かったのです。

ガブリエルは、カーターにSWATチームに狙撃を命じろと叫びます。カーターがホテル内では無理だと言った瞬間、光が炸裂し、建物全体が揺さぶられます。
61 リンカーン記念館
攻撃チームの他のメンバーがターゲットとした一つは、1922年に除幕された、古代ギリシャのドーリア式神殿を模したリンカーン記念館でした。本文にあるとおり、夜はライトで温かみのある黄金色に輝いています。

記念館の中央ホールには、高さ5.8mのリンカーンの坐像があり、両脇のホールの内壁にはゲティスバーグ演説(南側)と第二期大統領就任演説(北側)が彫られています。爆弾の入ったバックパックは、ドーリア式の柱の近くに置かれました。実行犯は、爆破後にグロック19を発砲し、全部で28人が死亡しました。

また、別のメンバーは、ジョン・F・ケネディ・センターに向かいました。1971年に開館した、舞台芸術の上演施設であり、ワシントン・ナショナル交響楽団の本拠地で、先ごろ、トランプ米大統領が自らの名前を施設名に加えるとした決議が違法と判断されて話題となった場所です。

一人が各州の旗が掲げられたこのホールに入り、チケット売り場で自爆用ベストを起爆しました。

他のメンバーは、アサルトライフルA15を手に、同じホールからこちらのアイゼンハワー・シアターへ、

続いて、オペラ・ハウスへ、

最後にコンサート・ホールへと、無差別に射殺して回り、全部で300人以上の命が奪われました。

生き残った3人のテロリストは、徒歩でロック・クリークとポトマック・パークウェイを横切り、ワシントン・ハーバーに入りました。

そして、次々と回って無慈悲な殺戮を繰り広げたレストランの一つが〈フィオーラ・メア〉です。

こちらは〈ニックのリバーサイド・グリル〉です。

最後が〈セコイア〉です。

攻撃チームのリーダーを含む3人は、更なる獲物を求めてジョージタウンの中心部に入っていきました。
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サフィアとナタリーは、ホテルの裏の立体駐車場に準備されていたトヨタ・カローラに乗り込み、今回はサフィアが運転して、詰所のゲートを突破し、リー・ハイウェイに面したホテルの右折専用の出口を左折します。

ノース・リン通りとの交差点を左折し、キー・ブリッジへ向かっていきました。

出口で待機していたSWATには狙撃命令が出ておらず、FBIの監視チームとともにふたりを追いましたが、キー・ブリッジを渡るころには、カローラはMストリートに姿を消していました。
62 リバティ・クロシング、ヴァージニア州
意識を回復したガブリエルは、瓦礫の海に埋もれていました。あらゆるところが疼く中、瓦礫をどけ、痛みにたじろぎながらふらつく足で立ち上がると、頭の右側を負傷し、血が流れているのがわかります。明かりは全くなく、天井の割れ目から北斗七星の柄の部分が見え、窓からは車の流れが交通ストップし、ライトが続くベルトウェイが見えました。ポケットの携帯は無事で、ミハイルに電話をかけますが、爆音で耳をやられたのか何も聞こえません。

ポール・ルソーは、無数の切り傷から血を流し、骨折した腕を抱えています。ファリード・バラカトは、何があっても生き延びるタイプで、迷惑そうに誂えのスーツから砂塵を払い落としています。エイドリアン・カーターは、本体に繋がっていない受話器を耳に当てたままです。
ガブリエルは、カーターにサフィアは死んだかを尋ねますが、自分の声もカーターの返事も聞こえません。
63 ジョージタウン
サフィアは、Mストリートに入った後、34丁目の交差点を通り抜けると、バンク通りに曲がります。

追跡をかわそうと、プロスペクト通りに突き当たると右折し、33丁目の交差点を今度は左折し、33丁目通りをスピードを落とさずに北上し、Nストリート、Oストリート、Pストリートと走り抜け、ヴォルタ・プレースで再び右折し、ウィスコンシン・アヴェニューに出て急停止します(キー・ブリッジからの経路は黄色のラインのとおり)。

サフィアが自分たちは第2波だと言って告げたナタリーのターゲットは、今夜フランス大使館の外交官とパリの外務省員との個人的な会食があるという、ウィスコンシン・アヴェニューにある〈ビストロ・ルピック&ワインバー〉でした。1995年にオープンした、本格的なフレンチ料理が味わえる、黄色の外観が特徴的なレストラン&ワインバーです。
サファイア自身は、自分のターゲットを明かさず、ナタリーを降ろすと、アヴェニューを南へ走り去っていきます。

ナタリーは、赤いステッチがある方の自爆用ベストを着るように強硬に言った理由を考えながら、指示されたターゲットの方に足を向け、公衆電話を探し始めます。サフィアが乗り捨てたカローラがウィスコンシン・アヴェニューとプロスペクト通りの角で発見されたのは、その5分後でした。
64 カフェ・ミラノ、ジョージタウン
サフィアがサラディンが座っている席まで来ると、サラディンは、自分の数分後に入ってきた、バーカウンターの端に座った黒髪と眼鏡の男性に視線を走らせます。カウンターの上のテレビはワシントンを襲った大惨事を伝え、客の多くが自分の携帯を見つめたり、テレビを見て動揺していますが、その男だけはサフィアの到着後に彼女から視線をそらして携帯電話を耳に当てており、自分がワシントンに来ていることが知られていると感づきます。

サラディンは、サフィアにライラ・ハダウィを指示どおりの場所で降ろしたことを確認し、カウンターの端の男がサフィアを止めようとしようとしていると注意した上、自分が出ていったら1分待って実行するように告げ、席を立ちます。

支配人に電話をすると言って通りに出たサラディンは、歩道の縁で待っていた黒のリンカーン・タウンカーの後部座席に乗り込み、数メートル進むように言いました。
65 ウィスコンシン・アヴェニュー、ジョージタウン
ナタリーは、Qストリートを渡ったところで女子大学生からiPhoneを借り、キング・サウル通りの緊急回線に発信し、ガブリエルに繋ぐよう頼みます。電話に出たのはエイドリアン・カーターでした。カーターは、ナタリーを拾いに行くので、ウィスコンシン・アヴェニューの西側を北へ向かって歩くように指示します。

また、カーターは、ガブリエルに代わって〈カフェ・ミラノ〉にいるミハイルにすぐ店を出ろと命じます。サフィアの自爆を止めるための銃もなく、パニックを起こさずに人々に警告することも難しく、爆発を待つしかないと判断したミハイルは、カウンターからサフィアのテーブルとは反対のトイレに向かいます。

エリ・ラヴォンは、プロスペクト通りの見通しのきく場所から〈カフェ・ミラノ〉を監視していましたが、数分前にアル=ファルークが店から出てきて今は店から50m程離れたところでリンカーン・タウンカーの後部座席に座り、その前に白いホンダ・パイロットが停まっています。ラジオはガブリエルがいるNCTCが爆弾テロに遭ったことを伝えています。

キング・サウル通りからガブリエルが無事でいるとのメッセージが届き、ラヴォンが安堵したのも束の間、〈カフェ・ミラノ〉で爆発が起こり、ホンダから武装した男が4人飛び出し、店へ向かったのです。
66 ウィスコンシン・アヴェニュー、ジョージタウン
爆発音がしたのは、Rストリートに近づいたときでした。ナタリーは、この殺戮を計画した怪物の命を救ってしまったことや、ターゲットについても他のテロリストについても攻撃の時期についても何一つ探り出すことができなかった自分自身の失敗に打ちひしがれながら、カーターから指示されたとおり、ウィスコンシン・アヴェニューを北に向かい、〈ビストロ・ルビック&ワインバー〉の前に到着し、おしゃれな店内をのぞいてみます。

そのとき、昨夜クラレンドン地区のレストランのトイレでFBIのミーガンと名乗った女から声をかけられます。助手席に滑り込み、北行きの車の流れに入りますが、おぞましいニュースを流すラジオのスイッチにナタリーが手を伸ばしたとき、女がナタリーの二の腕に注射し、ナタリーは、視界がぼやけ、意識を失います。
67 カフェ・ミラノ、ジョージタウン
トイレの中にいて爆発による直接の被害を避けることができたミハイルは、トイレのドアを開けた男の銃身を掴んでひきずりこむと、右手で攻撃し、AR15を奪って頭部を撃ち抜きます。その後、店内を回り、生存者を殺そうとしている残り3人のテロリストも順次倒していきます。

1分足らずで4人を天国へ送ったミハイルは、振動を続けていた携帯に出ると、聴力を回復していたガブリエルから倒したISISの携帯と持てる限りの武器を集めて店を出るよう指示されます。4台の電話とAR15二挺ほかを持って裏の通用口からポトマック通りに出て南のプロスペクト通りまで行くと、ラヴォンが待っていました。FBIがナタリーを見つけられずにいると告げると、ミハイルを乗せたラヴォンはUターンしてジョージタウンを西へ向かいました。
68 キング・サウル通り、テルアビブ
ミハイルとラヴォンがイスラエル大使館に届けた4台の電話から午後8時42分にアップロードされたデータを解析し、午後9時までに〈ドミニオン引越しサービス〉を突きとめたのは、第6旅でも活躍した、キング・サウル通りの414C号室のハッカーチーム〈ミニヤン〉でした。

CIA本部に移動していたガブリエルは、9時20分、CIA正門の検問所でカーターの車を下りると、フォーシーズンズ・ホテルで見かけたアル=ファルークこそサラディンで、ナタリーの潜入作戦が逆手に取られたのかもしれないという考えが頭をよぎりますが、いずれにしても自分の手でサラディンを殺し、生涯をかけてISISを破壊すると心に誓うのでした。そのとき、ミハイルが運転するビュイック・リーガルが現れます。

エリ・ラヴォンがいる後部座席に滑り込んだガブリエルは、ベルトウェイが渋滞しているので、ジョージ・ワシントン・パークウェイをキー・ブリッジの方へ戻るよう、ミハイルに指示します。
69 ヒューム、ヴァージニア州
車の中で意識を取り戻したナタリーが右側に見たという教会は、第52節に登場したヒュームの町にあるバプテスト教会だと思われます。

交差点を曲がって向かった哲学者の名前のついた道路(ヒューム・ロード)を1km程走り、牧草地を横切り、小さな谷間に入り、黒い池を見渡せる木造コテージに着きます。コテージにはリンカーン・タウンカー、ホンダ・パイロット、BMWが止まっています。

ミーガンに車からひきずり出され、ナタリーが入ったコテージの田舎風の部屋には、黒いタクティカル・スーツの男4人とエレガントなビジネススーツに身を包んだサラディンが待っていました。

サラディンから再会できてうれしいと言われ、ナタリーは起爆装置をきつく握りしめるのでした。
70 アーリントン、ヴァージニア州
ガブリエルら3人が向かったのは、カーリン・スプリングス・ロードの〈セブン・イレブン〉の角を曲がったところにある、カッサム・エル=バナの住まいでした。該当の建物は実在しませんが、第48節と同様、本文の記述に従い、イメージ画像をAIで作成してみました。

AR15を手に取ったガブリエルは、車に居残るラヴォンに荒っぽいまねはしないと言って、ミハイルと共に右側の玄関に向かいますが、中から女性の悲鳴が聞こえ、ドアが乱暴に閉まって明かりが消えるのでした。
71 ヒューム、ヴァージニア州
サラディンはいつから気づいていたのかと頭を巡らせるナタリーに、サラディンが携帯をタップして聞かせたのは、昨夜クラレンドン地区のレストランのトイレでミーガンをFBIと信じて話した内容でした。沈黙を通すナタリーに、サラディンは、君とサフィアは敵を欺くためのフェイントで、おかげでアメリカの連中の注意をそらすことができたと語ります。
そして、誰のために動いていたのか疑問だったが、今夜、君がその男の名前を教えてくれたと言って、再び携帯をタップすると、意識を失っていた間にナタリーがヘブライ語でうわ言を言った、ガブリエルに助けを求める声が再生されます。

サラディンは、ひとりで死ぬか起爆装置のスイッチを押して自分を道連れにするかを尋ね、君たちユダヤ人は生を信じ、信仰のために死を選ぶ勇気も信仰心もないと言って、それが間違いだというならスイッチを押してみろと迫ります。ナタリーは、サラディンの目をまっすぐに見つめ、スイッチを深く押し込みますが、何も起こりません。
72 アーリントン、ヴァージニア州
ガブリエルは、カッサムの妻のアミナに、カッサムはワシントンに甚大な被害をもたらしたISISの計画立案者であり、アミナも共謀者として起訴されると脅して協力を迫り、カッサムのパソコンの所在とパスワード(シャハーダ)を聞き出します。

英訳したパスワード ”アッラーの他に神なし” を打ち込み起動させたパソコンのハードディスクはデータが全て消去されていましたが、〈ミニヤン〉が数分間でヒュームという町の近くの小さなコテージの賃貸契約書を見つけ出します。ガブリエルは、カーターに連絡して、熱画像計測装置を積んだ飛行機をコテージの上空に飛ばしてもらうように頼みます。

コテージ内からは7つの熱源が感知され、外に車が4台停まっていました。ガブリエルは、ミハイルにスピードを上げさせ、コテージに急ぎます。車で約1時間です。
73 ヒューム、ヴァージニア州
口が軽くなったサラディンは、かつてイラクのムハバラートに所属し、パレスチナの自爆テロ実行犯の遺族に対する死亡給付金の支払業務などを担当し、サラディンというコードネームはパレスチナ過激派指導者のアブ・ニダルがつけたことなどを話し、敵としてシャムロンやガブリエルのことを称賛していたとも語った後、ナタリーに対する質問を始めます。ナタリーは、サラディンに被せられたシーツを巻き付けた即席ベールの下で、ヤッファ出身のアミット・メリドーだと偽り、次々と嘘をつきます。そして、サラディンの命を救ったのは信頼が欲しかったからと話すと、サラディンは、その信頼を裏切った罪により今夜君は死ぬことになると話します。

最後に、ナタリーが身元を偽っているとどうしてわかったかを尋ねますが、コテージの上空で旋回する単発機の飛行機音を耳にしたサラディンは答えず、コテージを出ていきました。旋回を続けていた飛行機はワシントンの方へ飛び去りますが、厄介なことになりそうだと直感したサラディンは、今すぐここを去らなくてはとBMWに乗り込みます。そして、カーナビはヒューム・ロードを左折してインターステート66に戻るように指示しますが、サラディンは直感を信じて右に曲がるのでした。
74 ヒューム、ヴァージニア州
ガブリエルとミハイルは、牧草地を横切って、南からコテージに接近します。4台あったはずの車が3台になっています。

サラディンが出発した後、処刑の準備が始まり、シーツが頭から外されたナタリーは、ミーガンが構えるカメラの前で、後ろ手に縛られ、跪かされます。4人の男の中でイエメン人が処刑役に決まり、ナタリーの後ろに立って声明を読み上げます。死を前にした瞬間、ナタリーは、窓の外におぼろげに見えるミハイルの顔に気づきます。

イエメン人が飛びかかってきて横倒しになったナタリーが男に喉をつかまれた瞬間、ピシッと鋭い音がして、イエメン人が崩れ落ち、残りの男たちも倒れ、後にインディアナ州ヴァルパレーゾ出身でイスラム教に改宗したミーガン・テイラーと判明する女も頭を撃ち抜かれて倒れます。
第4部 指揮する者
75 ワシントン __ エルサレム
国家テロ対策センターほか各地の被害が報告され、自爆テロ犯のひとりがワインバーグ・センター爆破事件の実行犯サフィア・ブリアーヌであることが判明する中、アメリカ大統領は、直ちにISISのすべての拠点への大規模空爆を命じ、特殊作戦によってISISの指導者を殺害・捕獲するが、反撃はその範囲に限定され、(世論の大勢に反し)地上部隊の派遣はないと発言します。

一方、ヴァージニア州のヒューム近くの木造コテージの敷地内の池から、韓国製セダンの運転席に座ったカッサム・エル=バナという人物の射殺死体が発見され、その妻の記者会見を発端に、彼女を自宅で尋問した男がイスラエル人で鮮やかな緑色の目を持つ伝説のスパイであるという噂か広がります。そして、テロ事件から6日目、ワシントン・ポストから、ガブリエル・アロンが生きているという記事が出ます。
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エルサレムでも、ワシントン・ポストのウェブ記事が出た夜、ラビ・アキヴァ通りの〈フォカッチャ〉で、ガブリエルが家族と食事をとっていたという詳細な目撃証言が出ます。名物の薪窯焼きフォカッチャをはじめ、パスタやステーキなどのボリューム満点な地中海料理が楽しめる有名なイタリアン・レストランです。

また、翌日の午後に、エリ・ラヴォンとカフェでランチをとるガブリエルの姿が目撃されたというマミーラ・モールは、ヤッファ門の近くに位置し、140以上の店舗、レストラン、カフェが軒を連ねる、アルロフ・マミラ通りとも呼ばれる、歴史的な街並みと調和した全長2000フィートの歩行者専用通路です。乳製品料理を専門とし、地元の料理や本格的なイタリアンを提供する〈カフェ・リモン〉が有名で、広々としたテラス席からは旧市街の城壁や歴史的な街並みを眺めることができます。

その日の午後4時、パリからエールフランスの定期便でベン・グリオン空港に運ばれ、1時間後、イスラエル博物館の保存修復ラボのイーゼルにセットされたのは、まだ完了していない仕事に対する報酬、ゴッホの《鏡台のマルグリットガシェ》でした。

コーヘンの忠告をよそに、ガブリエルは、イスラエル博物館以外への売却・貸与を禁止することを条件に、ゴッホの絵に関するすべての権利を放棄する書類にサインします。人差し指でマルグリットの顔を軽くなでて、この絵はこれ以上の修復はないが、ナタリーは少しだけ修復が必要だと考えるのでした。
76 ナハラル、イスラエル
すべてが始まったナハラルの古いモシャブにある農家に連れてこられたナタリーは、夜ごとに悪夢に襲われ、医師の治療とセラピストによるカウンセリングやパレスチナ人が抱える憎悪と熱烈なイスラム信仰を追い出すトレーニングを受けます。そして、訪ねてきたダイナ・サリドとともに、ナタリーが経験した詳細な情報を記録していきました。ダイナは、最後に、ナタリーに引きずり込んでしまったことを謝ります。

ミハイルが訪ねてきたのは1週間近く経ってからでした。1回目は短く、2回目はふたりで映画を見て、3回目はカエサレア(第1旅にも登場したイスラエルの観光名所)に出かけました。古代ローマの遺跡を歩きながら(写真は紀元前1世紀にヘロデ王が建設した水道橋)ミハイルは、かつてロシアで起きた人生最大の危機について語り、自分の命を救ってくれたのがガブリエルとその妻だった(シリーズ8作目『Moscow Rules』でのエピソード)と話し、そのときのことは毎晩考えると打ち明けます。ナタリーは、自分はミハイルによく似ていると話します。

翌日の午後、ナタリーがランニングから戻ると、ガブリエルが農家のリビングで待っていました。コーヒーテーブルには、3つのファイルが載っており、一つはナタリーに関する医療報告書で、PTSDの症状が見られるが、適切な投薬とカウンセリングの継続で回復が望めるとのことでした。残りの一つは契約解除の合意書、もう一つは正式雇用契約書でした。

ガブリエルが〈オフィス〉に残るよう話すと、ナタリーは、仕事仲間の交際について質問し、ミハイルのことを尋ねます。そして、最後に3つめのファイルを取り、ペンを借りるのでした。
77 ペタク・ティクヴァ、イスラエル
土砂降りの土曜日、ガブリエルは、長官室を明け渡してテルアビブ郊外のペタク・ティクヴァにある自宅に引きこもっていたウージナヴォトを訪ねます。第6旅によれば、市の東端の静かな通りにあります。

撃退しようとするベッラに頼み込んで家に入れてもらい、リビングでウージと話をするガブリエル。音を消したテレビでは、イラク西部の家(サラディンが隠れていると思われた家)を米軍のドローンが攻撃したというニュースを報じています。カリフォルニアの民間軍事会社の仕事を断り、〈オフィス〉に残って組織運営を補佐し、自分が作戦を指揮する間、実務を担当してほしいと頼みます。

ウージは、大きなため息をつくと、年収100万ドルの仕事を蹴って〈オフィス〉に留まる決心をしたことをベッラにどう話せばいいだろうと話します。
78 エルサレム
自宅に戻ったガブリエルは、キアラと双子も連れてマウント・ヘルツル精神科病院に前妻リーアに会いに行きます。第7旅(第84節)では、リーアの入院先をヘルツォーク病院と推定しましたが、本作の著者ノートで名前が出ているクファル・シャウル・メンタルヘルス・センターである可能性が出てきました。1951年に設立された公立の精神科病院で、著作ノートのとおりハダッサ医療センターと提携関係にあり、エルサレム症候群の研究で広く知られています。

ガブリエルが、談話室でリーアの手を握り、作戦のため死んだことにしていたこと、長官に就任すること、子供たちが明日で1歳になることなどを話すと、リーアは二人に会いたいと笑顔で言い、まずラファエルを抱かせると、よく似てると言って額に唇をつけます。
79 エルサレム __ ティベリア
翌日の午前10時、イスラエル博物館では、これまで世に知られていなかったゴッホの作品《鏡台のマルグリット・ガシェ》をハンナ・ワインバーグの遺産から取得したと発表します。寄贈者の名前の公表は頑なに拒否して。

バックの画像は博物館の絵画館にあたるエドモンド&リリー・サフラ美術棟(Fine Arts Wing)の一角です。
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12月の日曜日、首相がガブリエル・アロンが無事生きていて〈オフィス〉の次期長官に就任することを、組織の長を意味する”ラムサッド”ではなく、指揮する者を意味する”メムネ”と表現して発表し、ガブリエルもスピーチし、過去の偉大なる伝統に根ざしつつ、将来を見据えて進んでいくことを約束します。

その後の閣議では、今後の計画や優先順位、直面している課題について長時間にわたる陳述を行い、ISISの脅威を告げ、前長官が〈オフィス〉にとどまることも伝えました。

キング・サウル通りに移動して訓示等を終えると、ウージとともにティベリアにあるシャムロンの家へ向かいます。
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シャムロンの家のテラスには、今回共同作戦を行った米英仏約の諜報機関のリーダーのほか、美術商ジュリアン・イシャーウッド、ガブリエルの死亡記事を書いたサマンサ・クック、コーンウォールのティモシー・ピール、絵画泥棒のモーリス・デュラン、ローマ教皇の個人秘書ルイジ・ドナーティ、スイス保安機関のクリストフ・ビッテルなど過去に登場した人々がみんな集まって、ガブリエルの長官就任の祝賀会、そして、子供たちの満1歳の誕生パーティが開かれました。

午前零時にパーティがお開きになると、シャムロンとラファエルを抱いたガブリエルはテラスの端のいつもの場所に座り、これまでの思い出話をしながら、シャムロンはこれでいつでも去っていけると語り、ガブリエルはどこへも行かないでと話します。

最後に、多くの友人を失ったと暗い声で言い、ハンナ・ワインバーグの敵討ちは手配済みだと付け加えます。
80 ベスナル・グリーン、ロンドン
敵討ちの対象は、ジャラル・ナセルでした。逮捕やヨルダンへの強制送還ではなく、シャムロン流の解決法が選ばれ、実行の舞台となる英国当局が黙認することは、あのパーティの夜、シャムロン家のキッチンでMI6のグレアム・シーモアとの間で合意されていました。そして、MI5のアマンダ・ウォレスに監視の終了という協力を取り付けたシーモアから、ガブリエルに出番だとの電話が入ります。

ガブリエルは、長官の自分がすべきではないと、その夜、ミハイルをベン・グリオン空港まで送り、ロシア国籍のパスポートを手渡してロンドン行きの便に乗せます。

偽造パスポートには、”汝、囚われることなかれ”というメモを忍ばせてありました。
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ジャラルが彼にとって最後の日となるその日、買物をして過ごしたのは、第2旅に登場した、オックスフォード通り


そして、礼拝をおこなったのは、東ロンドン・モスクでした。ロンドン東部のホワイトチャペルに位置し、7,000人以上の礼拝者が集団礼拝に参加できるヨーロッパ最大級のモスクです。付属するロンドン・ムスリム・センターと共に、英国におけるイスラム教コミュニティの重要な拠点として中心的な役割を果たしています。

夜の7時20分に夕食に出かけ、チャーハンとチキンウィングを食べた、ベスナル・グリーン・ロードの〈ヌードル・キング〉は、リーズナブルな街中華のお店でしたが、既に廃業しているようです。

その後に牛乳1瓶を買ったコンビニエンスストア〈セイヴァー・プラス・フード・センター〉はこちらで、同じベスナル・グリーン・ロード沿いにあります。

そして、8時12分、チルトン通り33番地の自宅の玄関に着いた時、落とした鍵を拾おうとして通りに立つミハイルに気づきます。誰だと訊くジャラルに、ミハイルは、この世で目にする最後の人間だ、ハンナ・ワインバーグのために、お前がパリで殺した者のために、アムステルダムとアメリカの犠牲者たちのためにやってきた死者を代弁する者だと話します。

協力するからやめてくれというジャラルに、ミハイルの銃が火を噴き、心臓に命中します。その後も撃ち続け、ガブリエルが〈神の怒り作戦〉で行ったように合計で11発の弾丸を撃ち込みます。そして、背後から近づいたバイクの後ろにまたがり、姿を消します。
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第11シーズンのいながら旅は、以上で完結です。次の旅のガイドブックは、ISISの首謀者サラディンを追跡する、本作の続編『死線のサハラ』を取り上げますので、楽しみにしてお待ちください。