ダン・ブラウンの小説『シークレット・オブ・シークレッツ』de いながら旅(4)

10 シークレット・オブ・シークレッツ
10 シークレット・オブ・シークレッツ● ダン・ブラウン

 第2部からいながら旅を続けます。ゴーレムは、最終目的とする界域の破壊のため次の行動に移るようです。ラングドンとキャサリンは、キャサリンの原稿の何が今回の事態を引き起こしたのかを解明し、身の安全を図ることはできるでしょうか。


第2部 界 域

30 ヨゼフォフ地区

 ゴーレムが歩いていたのは、旧市街広場からヴルタヴァ川へと北東に延びるパジーシュカー通りでした。高級ブランド店が入るアールヌーボー様式やバロック様式の美しい建物が立ち並ぶ、パリを思わせるような優雅な雰囲気のある大通りです。

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 パジーシュカー通りを5分弱歩いた場所には、第6節で紹介した旧新シナゴーグがあります。ヨゼフォフ地区(旧ユダヤ人地区)には6つのシナゴーグがありますが、現役はここだけで、かつ、ヨーロッパ最古の現役シナゴーグです。13世紀建築部分と16世紀に増築された部分からなるためこの名前となったとされていますが、上巻360頁にあるとおり、救世主が現れたら元の場所へ戻すという条件付きで天使がエルサレムから石を運んできたという伝説に由来して、この「条件付き」のヘブライ語(al-tnay)の逐語訳が「旧新」を意味するイディッシュ語(alt-nay)と混同されたという説もあるようです。

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 ゴーレムは、プラハに着いて間もない頃に訪れ、見えない力に引き寄せられるかのように会堂の中に入ったようです。通りからは9段の階段を下り、この玄関ホールを抜けていきます。

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 会堂へのゴシック様式の入口のティンパヌムには、イスラエルの12部族を表す12房のブドウが彫られています。

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 死んだように静まり返り、神秘的とも言えるエネルギーに満ちていたと表現される内部は、中央の2本の柱に支えられた6つのリブ付きヴォールト天井のある二重身廊となっており、実際はシャンデリアの電光によりかなり明るそうです。

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 祭壇の後ろには、第4旅(第3節)にも登場した、モーセ五書の巻物を納めた契約の箱(聖櫃)が鎮座しています。

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 ゴーレムは、何世紀にもわたって信者が座ってきたせいで表面が摩耗してなめらかな木の会衆席に腰を下ろし、ここで誕生した最初のゴーレムとロシアの精神科施設でサーシャの虐待に遭遇して誕生した自分を重ね合わせ、自分が存在する目的を悟った瞬間のことを思い出しました。

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 なお、第6節で紹介した、ゴーレムの残骸を隠したという屋根裏部屋は、梯子を使わなければ入れない高いところにあるとのことですが、残骸は見つかっていないようです。

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 今日は、シナゴーグではなく、シロカー通りを左に折れた隣の区画へ向かいます旧ユダヤ人墓地は、ヨーロッパ最大級のユダヤ人墓地です。15世紀前半から1786年まで3世紀以上にわたって利用され、空きがなくなっても古い墓を掘り起こすことをよしとはしなかったため、やむをえず元の墓地の上に盛り土をして、既存の墓石を新しい墓地の上に移すことを繰り返しました。場所によっては12層も重ねられ、高い石塀に囲まれた敷地には12,000基を超える墓石が存在するとされており、作中では「墓石の保管所」とか「世界一妖気が漂う場所」と表現されています。

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 白い建物は、ヨゼフォフ地区で最大のシナゴーグとされるクラウゼン・シナゴーグですが、前の墓地は手前より高くなっており、間の塀がなければ墓石がこちらにこぼれ出てきそうですね。 

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 ゴーレムが入り乱れた墓石の間を縫う苔むす石敷きの小道を進んで目指したのは、墓地の端、西の塀の方にあるラビ・レーヴの墓でした。人の身長ほどの高さがあり、ライオンの紋章が入った、ファサードを持つ教会のような形をしています。

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 墓碑の上部には、作中にあるように、訪問者が置いた祈りの言葉を書いた小さな紙片や小石が置かれているほか、コインも見えます。静寂の中、ゴーレムは、墓の前でひとり跪くと、最初のゴーレムの力が地面から湧き出てくるのを感じ、聖なる場の力を吸収して、力がみなぎる気がします。そして、報復を敢行しない限り彼女に安全は訪れないと思い、真実(אמת)と死(מת)の両方を選ぶことを決意するのでした。

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 墓碑の上にライオンが座るこちらの墓は、ハプスブルク帝国で最初の貴族となったユダヤ人、ヤーコプ・バセヴィの妻ヘンデル・バゼヴィのものです。

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 こちらの建物は、L字型の墓地の中心に位置し、1906〜08年にロマネスク様式で建てられた儀式の家で、葬儀が行われる場所であり、遺体置き場としても使用されていました。現在はユダヤ人の伝統や生活様式に関する展示がされています(ユダヤ人街区のシナゴーグ関連の施設と共通券で入場できます)。

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 また、近くのマイセロヴァ通りには、ゴーレムの名を冠したレストラン〈Golem〉があり、リーズナブルにチェコの伝統料理をいただけるようです。

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 その頃、十字架砦に到着した現地工作員のハウスモアは、玄関ドアが破壊されていたものの、ラボへの連絡ドアが施錠されたまま無傷なのを見て安堵し、目にした状況をフィンチに報告します。


31 キャサリンの発見

 ラングドンとキャサリンが乗ったリムジンが向かっていたのは、アメリカ大使館ではなく、大使公邸でした。車で約8分です

(イメージ画像をAIで作成)

 大使館のリムジンがマーネス橋に差し掛かったとき、ラングドンは、プラハ城の尖塔を見つめながら、誰かが原稿を抹消したくなるほどの、そして殺人を犯すほどの、何をキャサリンが発見したのか想像もつかないという様子でした。キャサリンは、越前敏弥氏も試した(10分39秒)チェコのコーラのコフォラをひと口飲み、「”再現性の危機”と呼ばれる現象」から話し始めます。

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 リムジンが上るホテック庭園を横切るつづら折りの急坂(ホトコヴァ通り)では、ヴルタヴァ川方向に眺望が開けています。キャサリンは、非局在型意識のモデルでは、人間の脳は意識を受信するラジオのようなもので、受信したい意識を選別して他を遮断していると説明し、情報過多で負担がかからないように脳の働きを抑制する物質がガンマーアミノ酪酸(GABA)で、GABAこそが意識を理解する鍵だと言い、GABAの研究を進めていたときに見つけたのがゲスネルの癲癇チップに関する論文だったと話します。ラングドンは、我々を取り囲む現実には知覚できない現実があるということかと咀嚼します。

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 ホテック庭園は、1832年に開設されたプラハで最初の公共公園で、アンヌ王妃の夏の宮殿の麓に広がる3.7haの庭園です。1913年に池の畔に造られた、詩人ユリウス・ツァイヤーの作品に登場する人物を象った大理石像が並ぶ記念碑などが見どころになっています。

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 キャサリンは、実験により、死の瞬間や癲癇の発作、ある種の幻覚剤がGABAの数値を低減させ、その結果、脳の遮断機能が低下し、多様な現実が見えるようになることを突きとめていました。そして、意識の化学は、人類が生き延びるために必要な手段になると話すのでした。ブベネチュ地区の高級住宅地(写真はペレオヴァ通りの入口)に近づく頃、ラングドンは、人間の意識に関する常識に革命を起こし、意識を拡大するロードマップを発見したのかもしれないと、キャサリンへの崇敬の念が湧き上がるのを感じました。

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 しかし、何故誰かがキャサリンの原稿を消し去ろうとしているのかはわかっておらず、その答えが見つかるのはこれからだ、とラングドンは思うのでした。リムジンは石造りのアーチと重厚な鋳鉄門を備えた大使公邸の入口に近づきます。

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 ラングドンは、公邸を囲む防壁を見つめながら、この中にどんな答えが待ち受けているのかと考えます。


32 アメリカ合衆国大使公邸

 プラハ6区ブベネチュ地区のロナルド・レーガン通りにあるペチェック邸は、フランスの古典主義バロック様式に影響を受けた新古典主義様式の代表的な邸宅で、ユダヤ人実業家オットー・ペチェックの邸宅として1924~30年に建設され、プラハ占領後にナチスによって接収されましたが、1945年以来、アメリカ大使公邸として使用されています。作中にあるとおり、荘厳な円柱が並ぶファサードは幅が100m近くあり、その上には庇付きの屋根窓を備えた銅のマンサード屋根を載せています。

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 ふたりが通されたリビングルームにはちょっとしたビュッフェが用意されていました。ラングドンは、クッキー2枚と濃いコーヒーを堪能して生気を取り戻し、大使と対峙するしかないと腹をくくるのでした。

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 この邸宅に関するドキュメンタリー番組を観ていたラングドンは、廊下を挟んだ公式晩餐室に入り込み、革張り椅子をひっくり返し、座面裏に貼られたナチス・ドイツの国章を確認します。すると、ネーゲル大使が現れ、合衆国政府として説明する義務があると謝罪交じりに挨拶しました。

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 ネーゲルが最もプライバシーが保てる場所だとしてラングドンとキャサリンを案内したのは、小さな図書室でした。ネーゲルは、ふたりの宿泊先に盗聴器を仕掛けたことを認め、キャサリンの本が出版されたら国家の安全保障に重大な危機が訪れると考えている組織が存在し、その事情を知る人物、ミスター・フィンチがふたりと話すためにプラハに向かっていると打ち明けます。そして、それ以上のことを話すには機密保持契約書に署名してもらう必要があると話します。

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 ラングドンは、弁護士や編集担当者と相談せずに署名することはできないとして拒絶し、電話一本架けられないのであれば立ち去るしかないと申し向けます。ネーゲルが外の安全は保障できないと話したとき、携帯電話の受信音が鳴ります。着信したメッセージを見たネーゲルは、動揺した様子で席を外します。

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 届いたメッセージは、サーシャのアパートメントに行かせたダナからのマイケル・ハリス死亡の報告でした。アパートにサーシャの姿はなく、窒息死したマイケルの遺体だけが残されていたことがわかり、激しい感情の波に襲われたネーゲルは、バスルームで胃の中ものを吐き、同時に罪悪感と悔恨の念に打ちのめされるのでした。

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 ネーゲルは、数年前、CIAの法務顧問であった当時、紛失した機密文書が自宅の抽斗から見つかったことで解雇され、長官からの推薦で幸運にもチェコ共和国の大使になれたのですが、ひと月が経った頃、CIAの科学技術本部長であった伝説の人物フィンチから、秘密工作員が ”Q”と呼ぶ投資企業In- Q -Telのヨーロッパ支部に異動してきたとして会ったレストランで、ネーゲルの自宅に機密文書を仕込んで解雇されるように仕向け、自分たちが都合よく操れる人物としてプラハに送り込んだことを知らされていました。ネーゲルは、これまでは操り人形として従ってきましたが、「もうたくさんだ」と呟くのでした。


33 ネーゲル大使の告白

 ラングドンは、機密保持契約書に署名したら最後、キャサリンは自分の発見について二度と話すことも書くこともできなくなると説明し、サイドテーブルの中に隠された大使の固定電話を見つけ、フォークマンに電話をかけます。

Wikimedia Commonsから切り抜き)

 オフィスで電話に出たフォークマンは、ハッキングの首謀者はCIAを親組織とするIn- Q -Telというベンチャーキャピタル企業だと話し、しかも、ネーゲル大使もCIAの出身者と判明したことから、すぐに公邸を出るようにと囁くのでした。

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 ペチェック邸の地下には、下巻60頁に48本の赤い大理石の柱が二重に取り囲む薄青と白のタイル張りのプールと記述される、1度しか使用されなかった、当時としては贅沢品と見なされるローマ浴場様式の18mプールが実際にあるようです。ラングドンとキャサリンは、この邸から抜け出そうと、地下の出口に通じていることを期待して、狭い階段を下りてこの空のプールにやってきたのですが、プール室に出口はありませんでした。

(イメージ画像をAIで作成)

 まもなくして、独りで下りてきたネーゲルは、ふたりの前で先ほどの機密保持契約書を細かく引き裂き、ふたりに聞こえるようスピーカーフォンにしてフィンチに電話をかけると、ラングドンとキャサリンが契約書に署名済みだと偽りを伝えたのです。そして、声が洩れないようふたりをボイラー室に連れていくと、CIAに繋がるIn- Q -Tel、略称Qというベンチャーキャピタル企業のこと、フィンチがそのQのヨーロッパ支部を実質支配するポストに就いていること、詳細な理由はわからないが、キャサリンの原稿がQの重要な投資対象を脅かすとフィンチが考えていること、その投資対象は「界域」と呼ばれる科学研究施設で、ブリギタ・ゲスネルが関与していることから、おそらく人間の意識に関する研究を行うものであること、施設自体は完成しているが本稼働はしていないこと、ゲスネルのラボのある十字架砦からそれぼど遠くない場所の地下にあり、元からあった施設を改造して建設され、広さが約1000㎡あることなどを告白します。

(イメージ画像をAIで作成)

 ラングドンは、すぐにそれが1950年代にプラハに建設された、ヨーロッパ最大級のソヴィエト連邦式の防空壕で、現在その一部が観光名所となっているフォリマンカの地下シェルターであることに気づきます。ラングドンが見たことがあるという入口は、フォリマンカ公園の東端、ポッド・カルロヴェム通りに面した場所にあり、作中にあるとおり「KRYT FOLIMANKA」という文字がペンキで描かれています。

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 ネーゲルは、更にマイケル・ハリスが死体で発見されたことを伝えてCIAや界域に近づくことは危険だと警告した上、事態を解決してラングドンとキャサリンを守るために必要なことは何でもすると言って、3つの選択肢を示します。第1の策は、改めて機密保持契約書に署名する方法、第2の策は、フィンチが到着する前に国外に脱出し、本を出版するまで時間稼ぎをする方法、第3の策は、機密保持契約書に署名しているとフィンチが信じていることを逆手にとって彼に多くを語らせ、得た秘密の情報を武器にして急逝時条項を結ばせる方法。それに対し、ラングドンは、第4の策があり、それが最善の策だと言います。


34 フィンチの回想

 エヴェレット・フィンチを乗せたサイテーション・ラティチュードがプラハへ向け最終着陸態勢に入ります。セスナ社の中型ビジネスジェットです。

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 機内のインタラクティブマップが表示したというビーラー・ホラの丘は、三十年戦争中、ハプスブルク家がボヘミアのプロテスタント貴族の反乱を鎮圧した、1620年の白山の戦いの戦場となった場所で、丘の頂上には石積みの記念碑が立っています。

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 フィンチが到着したヴァーツラフ・ハヴェル・プラハ国際空港は、プラハ北西郊外のルズィニェ地区に1937年に開港した国際空港です。ラングドンとソロモンを確保し、秘密保持契約書に署名させたと聞き、フィンチは、心の中で任務完了と言い、今回の作戦を振り返ります。

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 人間の頭脳が世界の次の戦場となり、その中枢に位置づけられる界域のテクノロジーを守るためにはあらゆることを実行しなければならなかった。キャサリン・ソロモンについては、純粋知性科学の兵器応用に否定的で、長年CIAの監視リストに載っていたが、人間の意識に関する本を執筆中であることを知り、ゲスネルを利用してプラハにおびき寄せたものの、新刊見本は入手できず、ゲスネルとも連絡が取れなくなった。宿泊先に仕掛けた盗聴器から聞こえた会話から、ゲスネルが持っている極秘であるはずのRFIDカードのことをソロモンが知っていることがわかり、ゲスネルから人間の意識に関するCIAの研究のことを聞き出し、暴露本を発表するのではないかと疑念を抱いた。そして、原稿が既に編集者の手に渡ったことを知り、原稿を早急に盗み出すよう命令した。また、秘密を暴露することで有名なラングドンに対する対応も計画した。ハッカー部隊から送られてきたソロモンの原稿をワード検索すると、重大な問題をもたらすことが明らかとなった。その後、ソロモンがプリントアウトしたという知らせも舞い込んできた。フィンチは、すぐさま対抗手段を決断し、プラハとニューヨークの現地工作員に実行命令を送信したのでした。


35 第4の策

 ラングドンとキャサリンは、自家用のSUVに乗ったネーゲルがクラクションを鳴らすのを合図に、温室から芝生を突っ切ります。

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 そして、ネーゲルがセキュリティ・ゲートで海兵隊員の守衛を引き付けている間に、錬鉄の歩行者用ゲートから外へ出ると、公邸周りのロナルド・レーガン通りとブベネチュスカー通りを抜けてきたネーゲルとチェスコスロヴェンスケー・アルマーディ通りで合流してSUVに乗り込みます。

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 ラングドンが提案した第4の策とは、仮にフィンチがラングドンたちの秘密保持契約書への署名を信じたとしても、界域の真相を語ってくれるとは限らないので、身を守るのに必要な情報と証拠を確実に手に入れるため、界域の中に入るというものでした。ネーゲルは、ラングドンが立てた予想外の侵入計画を聞いて希望を抱き、プラハの南部へ向かいます。ラングドンたちが公邸へ来たときに通ったペレオヴァ通りは北向き一方通行なので、デイビツェの勝利広場の六叉路(写真)を経由します

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 ネーゲル大使の私用の携帯電話が鳴ったのは、向こうにプラハ城や聖ヴィート大聖堂の尖塔が見えるホトコヴァ通りのヘアピンカーブを曲がっているときでした。発信者は、ダナと一緒にハリスの遺体回収を指揮しているはずの海兵隊保安警備隊長スコット・カーブル軍曹でした。

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 カブール軍曹から、ハリスの遺体の上に彼を殺害した人物からネーゲル大使に宛てた手紙が置かれていたと聞き、驚いたネーゲルは、電話を膝に落とし、マーネス橋に入る直前でハンドルを左へ切って、翼のライオン像を過ぎた辺りのクラーロフ通りの路肩で急停車させます。この記念碑は、第二次世界大戦中に英国空軍に所属したチェコスロバキア兵士を讃えて2014年に設置された、イギリスの彫刻家コリン・スポフォースの作品です。

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 ネーゲルは、手紙の内容を確認するため、ラングドンたちに車を預け、独りでレテンスカー通りを歩いて大使館に向かいます。下巻105頁には8分で行けるとありますが、Googleマップによれば13分程かかりそうです。フォークマンに大使公邸を出たら電話すると約束していたラングドンは、安全な回線から代わってかけると言うネーゲルに、それではフォークマンが信じないと考え、フォークマンには通じるからと言って、彼のメールアドレス宛てに意味不明の謎の文字列を送るよう頼むのでした。


36 ゴーレムの侵入

 再び十字架砦を訪れたゴーレムは、期待で力がみなぎるのを感じます。

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 ゲスネルのラボへの入口通路を歩き、玄関広間からラボへの階段室へと向かいます。第12節でラングドンがサーシャと砦から離れた通路です。

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 睡眠不足で意識が朦朧としていたハウスモアは、コーヒーを淹れて窓際の椅子に腰掛けていました。彼方のプラハ城の壮大なさまに見とれていたとありますが、距離と角度から実際に見ることは難しいのではないでしょうか(写真は〈バスティオン・プラハ・レストラン〉の中からの眺望です)。

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 物音がして警戒態勢をとったハウスモアは、黒い外套をまといフードをかぶった何者かがラボへ通じる階段室に入ろうとしているのを目に留めるや、大声で制止して発砲しますが、生体認証のドアをすり抜けた相手は、土が固まった月面のような顔をし、額に記号らしきものが刻まれており、ガラス越しにハウスモアを見据えてから、階段を駆け下りて姿を消しました。ハウスモアが階段室のドアの方を向いたままフィンチに電話をかけようとしたとき、背後から電撃が貫きます。階段でラボに下りたゴーレムは、おそらくエレベーターを使って広間に上がり、ハウスモアの背後に回ったのでしょう。

 ゴーレムは、倒れたハウスモアに馬乗りになると、首を絞めて殺害し、その死体をソファーの裏に隠します(第9節でラングドンが腰掛けた白の長椅子でしょう)。ダン・ブラウンは、レストランのこの特徴的なソファーをイメージしたかもしれませんね。

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 ゴーレムは、エレベーターにパスコードを入力して地下のラボに下り、ゲスネルの死体が横たわるEPRポッドへ歩いていき、ワイヤーカッターを使ってゲスネルの手からRFIDカードキーを有効化するのに必要なものを手に入れると、ゲスネルから聞き出した手順に従い、界域に足を踏み入れます。写真は、ちょうどゲスネルのラボのある地下階の高さ位にある、十字架砦の擁壁の下にある外周通路です。

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 そして、サーシャをこのプロジェクトの犠牲者としないために界域を今日で終わらせると誓うと、感情がこみあげてきて発作の前兆が現れるのでした。


37 ネーゲルの反抗

 大使館の外の歩道で大使が乗った車が近づいてくるのを待っていたカーブル軍曹は、ネーゲル大使が歩いてやってきたのを見て驚きます。カーブルから受け取った手紙には、サーシャを助けてとだけ書かれ、YouTube動画のURLが添えられていました。動画を閲覧すると、ゴーレムに変装した犯人によってゲスネルに野蛮な尋問が行われ、自分が何も知らずに協力させられていた極秘計画の詳細が告白され、その内容にネーゲルは吐き気を催します。

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 ネーゲルは、CIA長官のグレゴリー・ジャッドに電話をかけ、フィンチが自分をプラハの操り人形とするために罠にかけたことを知っていたかを尋ねます。長官が事後に知ったと答えると、ネーゲルは、動画のリンクを長官の執務室に送ったと言って、要求に応じなければ、フィンチの計画に関する恐ろしいほど不穏な内容が含まれる動画が公開されると脅迫し、1時間後に電話すると告げて電話を切ります。そして、動画のコピーをコンピューターのデスクトップと、ファイル名を変えたものを階層化されたフォルダの奥深くにそれぞれ保存し、また、USBメモリにも保存して自分宛ての外交封印袋に入れ、カーブル軍曹に託すのでした。

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 ネーゲルは、ハリスの死亡にショックを受けて辞職するというダナを説き伏せてサーシャの行方を探させようとしますが、CIA長官からネーゲルの拘束命令が出ます。カーブル軍曹は、部下に大使を拘束させる一方、直感に従い、大使に目配せした上、託された外交封印袋を退出するダナの私物の箱に滑り込ませます。

(イメージ画像をAIで作成)

 CIA長官の命令により、大使の執務室からあらゆる電子機器が回収されます。そして、カーブル軍曹は、GPSの追跡により、フォリマンカ公園の小高い丘に停められていることが判明したネーゲルのSUVの回収に向かいます。


38 オストルチル広場

 ラングドンは、ネーゲルのマニュアル運転のSUVに悪戦苦闘しながら、フォリマンカ公園をめざして南へ向かいます(ネーゲルと別れたところから15分程)。写真左に写っているのは、ナ・スルピ通りに交差する城壁です。

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 フォリマンカ・シェルターのリノベーション・プロジェクトへの入口があるとされるオストルチル広場は、チェコの作曲家兼指揮者のオタカル・オストルチルに因んで名付けられ、下巻119頁にあるとおり、電車の線路、交通量の多い通り、フォリマンカ公園の南西角に接した三角形の広場です。

Googleマップ他の画像

 堅牢な防柵はありませんが、この2023年の写真では改修工事のため金属フェンスに囲まれています。ここが工事終了後に界域の正面入口となる場所です。

 因みに、第33節で紹介したフォリマンカの地下シェルターの入口は、写真左に写っている道路をフォリマンカ公園に沿って進んだところにあります。

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 しかし、ラングドンの作戦において侵入を実行する場所はこの入口ではありませんでした。


39 謎の文字列

 フォークマンは、ラングドンから無事を知らせる電話を待ちながら、キャサリンの研究とQの投資対象との関連を調べていましたが、思うような結果が得られず、苛立ちを募らせていました。夜明けの薄明りの中、ビリオネアズ・ロウにそびえ立つ極細超高層ビル群(中央に見えているスタインウェイ・タワーは建物の幅と高さの比率が1:24と世界で最も細長い超高層ビルと言われています)とセントラル・パークの向こうを眺めて物思いにふけった後、検索を再開しようとしたとき、「ロバート・ラングドンからのメッセージ」という件名のEメールに気づきます。

CNNから引用)

 送信元がCIAの元法務顧問であったネーゲル大使であったことから、怪しみながらおそるおそる開いたメールは、一見意味を成さない「ROT13EY&XFETHQ」という謎の文字列でしたが、ROT13が各文字を13文字先のアルファベットに置き換える単一換字式暗号を示すことに気づき、「RL&KSRGUD」と解読し、つまりRL&KS ARE GOOD(ロバート・ラングドンとキャサリン・ソロモンは無事だ)とわかると、大声で笑いました。


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 今回の投稿での旅はここまでです。ラングドンとキャサリンは、いよいよ界域の中へ侵入するようです。界域の破壊を目指すゴーレムとの接触はあるのでしょうか。ふたりの味方をして拘束されたネーゲル大使はどうなるのでしょう。

 次回は、第2部の続き、第40節からいながら旅を続けます。

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