第1部の続き、第20節からいながら旅を続けます。舞台はペトシーン・タワーに移りました。ラングドンは、パヴェル警部補の追跡を逃れ、キャサリンのメッセージの暗号を解き、無事彼女と再会を果たすことができるでしょうか。
第1部 キャサリン・ソロモンの原稿(承前)
20 逃 走
キャサリンやフォークマンと昼食をともにしたときのことを思い出していたラングドンがペトシーン・タワーの頂上から地上を見下ろすと、パヴェル警部補が到着し、拳銃を携えてタワーに向かってくるところでした。ラングドンを乗せたタクシーの運転手から青のアラートにより情報提供を受けて駆けつけたのです。

パヴェルは、エレベーターで頂上に向かいますが、展望台には誰もおらず、下の方で金属の階段を打ち鳴らす靴音がするだけでした。ラングドンは、屋外の螺旋階段を跳ねるように猛スピードで駆け下りていたのです。

パヴェルは、先回りしようとエレベーターに飛び込んで下降し、螺旋階段の出口に銃を向けてラングドンの到着を待ちますが、階段を下りるラングドンの足音は聞こえず、何か重いものが屋根に落ちる鈍い音が聞こえます。

エレベーターとの競争に勝ち目はないと悟ったラングドンは、案内所の屋根のところで階段を下りるのをやめ、手すりの向こうへ飛び出し、ゆるやかな勾配の屋根の上に落ちたのです。

腹這いで屋根の端まで滑っていったラングドンが着地した、建物の裏手というのはこちらです。テラスとなっているタワーの基部で、周りの地面から高くなっているおかげで飛び降りる距離は短かったようです。

上巻288頁にある、逃げるラングドンの前方に見えたというメリーゴーランドは、3Dマップのとおり、タワーの西側にあったようです。また、バラ園は、現在はなくなっているようですが、左下に見えている整備工事中のスペースにあった飢餓の壁南側の花壇のことではないでしょうか。ポニーの厩舎があったかどうかは判然としません。

屋根の上に見晴らし台が設けられた礼拝堂(上巻288頁)というのが、1737年にエルサレムにある礼拝堂(第1旅で紹介したキリストの墓とされるエディクラ)をモデルにペトシーンの丘における十字架の道行きの終着点として建てられた聖墳墓礼拝堂のことだとすると、メリーゴーラウンドとは反対(東)側にあるので、バラ園の脇を駆け抜けて向かったいう記述に従うと、ラングドンは、タワー南の飢餓の壁を一度南へくぐり、東へ向かった後、向きを変えて再び壁を北へくぐって走ったことになります。

次にラングドンの前方に見えたという三つの建物のうち、時間帯から閉まっていると思って向かわなかったのが、聖ヴァヴジネツ教会とカルヴァリ礼拝堂です。

カルヴァリ礼拝堂は、十字架の道行きの最後から2番目の場所であり、正面の壁には、ミコラーシュ・アレシュのデザインに基づき、ヤロスラフ・レイドルが1936年に描いた《キリストの復活》のスグラッフィート があります。

そして、身を隠すため逃げ込んだのが、その左側にあり、「おとぎ話に出てきそうな明るい黄色の城で、まがい物の小塔に色とりどりの紋章が描かれた旗が掲げられ、見せかけの城壁の上でなびいている」と記述されている、鏡の迷路です。元は1891年のプラハ万博のためにキド・ベルスキーがヴィシェフラドのシュピチュカ門を模して設計したパビリオンで、博覧会後にここに移設して鏡の迷路として利用しています。9つの小塔は風見鶏になっていて、掲げられた旗には職人たちの名前が刻まれているようです。

ラングドンが大急ぎで渡った偽の跳ね橋というのがこちらです。入口の横の看板には、「Zrcadlové Bludiště(ズルツァドロヴェー・ブルジシュチェ)」の下に「The Mirror Maze」と英語も併記されていますので、ラングドンが見た看板はこれではないようです。営業時間や入場料については、こちらを参照してください。

6人の自分が輪になって等間隔に取り囲みこちらを直視していたのを見てラングドンが入ったことを心底後悔したという六角形の部屋です。ラングドンは、近くの通路をパヴェルが駆け抜ける足音や荒い息づかいを聞きながら、壁に手を這わせる戦法で出口を目指して迷路を進みました。

迷わずに迷路を抜けると施設の中央部分に到達します。作中には登場しませんが、内部にはこのようなジオラマ展示も見られます。正面の絵は、三十年戦争の終盤、1648年のスウェーデン軍によるプラハ包囲戦において、イエズス会のイジー・プラヒ率いる学生たちがカレル橋の旧市街橋塔を守って抵抗する様子を描いています。

出口の光へ向かって走るラングドンの前に右斜め前からパヴェルが現れます。パヴェルは迷うことなく発砲しますが、撃ち抜いたのは鏡に映るラングドンの幻影でした。ラングドンは、なんとか辿り着いた出口を駆け抜け、カーブを描いて続く舗装された歩道を全力で走りました。

前方に現れたのは、急勾配の線路でした。

ペトシーン・ケーブルカーは、ペトシーン丘への交通手段として1891年に建造された全長510mの単線のケーブルカーで(当初は水力駆動で、1932年に電化)、ウーイェスト駅、ネボジージェク駅、ペトシーン駅(写真)の3つの駅を結んでいます。

ラングドンは、息を切らして駅に辿り着き、1両きりの車両の閉まりかけのドアに滑り込みます。

なお、現在、ケーブルカーは、改修等のため、運休している(営業再開は2026年夏予定)ようです。
21 アメリカ合衆国大使館
大使館に戻ったダナは、ハイディ・ネーゲル大使からフォーシーズンズ・ホテルを訪れた事実やハリスと個人的な関係を持った事実を突きつけられ、解雇を覚悟して大使の執務室に向かいます。ところが、機密保持契約書にサインさせた上で大使が行ったのは、口止めではなく、彼女が何を見たかを理解させることでした。
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ダナへの説明をし終え、トゥルジシュチェ通りを隔てた〈アルキミスト・ホテル〉を疲れた顔で眺めていた大使は、海兵隊員からUZSIがラングドンを対象として青のアラートを発動したと告げられ、フィンチにプラハでの状況が悪化していると報告します。

こんな状況になったのはあなたの責任だとする大使に、フィンチは、ネーゲルをその地位に引き上げたのは誰か、そしてなぜだったかを思い出すように言います。そして、現地工作員のハウスモアに十字架砦に行ってゲスネルのラボの安全を確保するように命じます。
22 キャサリンの暗号
ケーブルカーがペトシーン駅を出て急勾配の斜面を下り始めると、ラングドンは、ひとまずパヴェルの手から逃れたと確信し、キャサリンがEメールで送ってきた暗号に考えを集中させます。

ラングドンは、キャサリンがエノク語のレクトとヴェルソ、すなわち書き進める方向を間違えたかアプリがテキストを変換する方向を間違えたのではないかと考え、文字を逆に並べて翻字してみます。「CODEXXL」と。

突然、解決の糸口が見え、キャサリンの暗号が「Codex XL」すなわち「XL写本」を指し示していることに気づきます。XL写本というのは、ラングドンがキャサリンに教えた、特大サイズに因んで学生が付けた愛称で、公式にはギガス写本として知られる、高さ92cm、幅50cm、厚さ22cm、重さ74.8kg、160頭の仔牛の皮を使った624ページに及ぶ《悪魔の聖書》と呼ばれる世界最大の写本のことだったのです。第3節に出てきましたが、ラングドンは、昨日キャサリンを誘ってそれが展示されているプラハのクレメンティヌムを訪れていました。

丘を下るケーブルカーの中で、ラングドンは、キャサリンがこの暗号で何を教えようとしているのかを考えます。写真は、上りと下りが行き違う中間点付近です。

ギガス写本が《悪魔の聖書》と呼ばれるのは、作中にハーヴァードの学生ブルーザーが「 ”おむつをした悪魔”」 と呼んで笑いを誘ったという、悪魔を描いた290頁目の挿絵と、戒律を破った修道僧が生埋めの刑(イミュアメント)を逃れるため一夜で写本するとした誓いを守れず悪魔に助けを求めて書き上げ、感謝の印として悪魔の姿を描き込んだという伝説に由来します。筆跡鑑定によれば、写本は一人の手によって書かれたことがわかっていますが、完成させるには20〜30年かかると言われています。

13世紀初頭に作られたこの写本は、セドレツ納骨堂があることで知られているシトー会のセドレツ修道院に質入れされ、70年間保管されており、ラングドンは、講義の中で、祭壇の左右に人間の頭蓋骨と大腿骨でできた大きなピラミッドが二つずつ配置され、壁や天井も人骨で装飾された、骨の礼拝堂のスライドを映して説明したことを思い出します。

1594年に神聖ローマ皇帝ルドルフ2世のコレクションとしてプラハに移されますが、1648年の三十年戦争終結後、スウェーデン軍が戦利品として持ち去ってから、スウェーデン国立図書館に保管されています。2007年9月から2008年1月にかけて一時的にプラハに戻され、クレメンティヌムで展示されましたが、作中にあるそれ以降10年ごとに里帰りするということは確認できませんでした。
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ケーブルカーがペトシーンの丘のふもとに到着したとき、ラングドンが出した答えは、キャサリンが《悪魔の聖書》のある場所で待っているのではないかということでした。

一方、ペトシーン・タワーの下に駐車した車に戻ったパヴェルは、青のアラートの発令に気づいたUZSIや大使館等から横やりが入る前にラングドンを見つけ出そうと決意します。
23 旧市街
ゴーレムは、アパートメントでゴムの頭蓋帽を被った上にヴルタヴァ川の粘土を厚く塗り重ね、額に「אמת」の文字を描き入れ、外套を着て裏通りへ出ると、先代のゴーレムから界域の破壊を実行する集中力と霊感を得ようと、プラハの最も審美的な力の脈動を感じる、死者の集う聖なる場所へ向かうのでした。

旧市街広場を横切るゴーレムは、ゴーレムの仮装をして被写体となるチップ目当ての役者と勘違いする観光客を無視し、ヤン・フスの銅像の前を通り過ぎます。写真は、1951年のチェコスロバキア映画『皇帝のパン屋とパン屋の皇帝』のために彫刻家ヤロスラフ・ホレイツがデザインした劇中のゴーレムをモデルに観光用に置かれたゴーレム像です。

広場を出て北へ向かうゴーレムが観光客が言う「プラハで2番目に有名な怪物」の話から連想したのは、フランツ・カフカの像でした。旧市街と旧ユダヤ人街との境界、スペイン・シナゴーグと聖霊教会の間の広場に置かれ、カフカの短編小説「ある戦いの記録」に出てくるカフカを背負う” 知人” をイメージした高さ3.75mのブロンズ像です。

ゴーレムは、サーシャを背負っている自分の姿を重ねながら、界域を破壊するという目の前の仕事に引き戻されるのでした。
24 キャサリンの行方
ウーイェスト駅を出たラングドンは、キャサリンがEメールを送ってきたのがプラハの文化施設の平均的な開館時刻よりかなり前であることに疑問を抱きながらも、中心部へ向かう22番系統の路面電車に乗車します。


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青のアラートに対し、路面電車の車掌から、ヴルタヴァ川沿いの道を北へ向かったというラングドンの目撃情報があったのは国民劇場の近くからでした。上巻323頁にある、ラングドンが路面電車を降りたというのは、国民劇場の停留場でのことなのでしょう(写真に写っているのは反対側の停留場ですが)。

ラングドンは、キャサリンの姿を捜しながら、クレメンティヌムを目指して、豪奢な〈モーツァルト・プラハ・ホテル〉の前を通りかかります。

ホテル近くの公園のキオスクに貼られたポスターに描かれた光輪に目が留まり、キャサリンが光輪はエネルギーが流出しているのではなく意識の光が流入しているものだと言ったことを思い出します。
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図書館へ急ぐラングドンが通り過ぎたのは、数時間前に走ったカレル橋の東の入口の前の歩道でした。

ラングドンはファサードに沿って北に進んだようですが、図書館には、上の写真の右側に見えている入口を入って中庭を抜けて行くことができます(下のクレメンティヌムの案内図も参照)。

青のアラートに対し、タクシー運転手から目撃情報があったという、マリエーンスケー広場からクレメンティヌムに入る入口がこちらです。右側のプラトネーシュスカー通りを通って来たと思われます。
クレメンティヌムは、11世紀に創建された聖クレメンスに捧げられた教会を起源とし、13世紀にドミニコ会修道院の建物となり、神聖ローマ皇帝フェルディナンド1世によって招請されたイエズス会が1556年から神学校として利用。その後近隣の建物等を取り込んで拡張され、2つの教会、2つの礼拝堂、5つの中庭を含む総面積は19,041㎡あり、プラハ城に次いで2番目に大きな複合建築物で、国家文化財にも指定されています。
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1722年に建設された天文塔は、高さ68mで172段の階段で上ることができ、プラハ歴史地区の美しい眺めを一望できます。塔の頂上には、マティアス・ベルナルド・ブラウンが制作した天球儀を担いだアトランタ像が設置されています。

塔の中には、メリディアン(子午線)ホールと呼ばれる、2つの四分儀を持つ部屋があり、幾何学と太陽光を用いて正午を計測し、当初は展望台から旗を振って、1891年からは旗と大砲でプラハ市民に正午を知らせていました。1928年まで続いたようです。

また、1722〜26年に建設された「鏡の礼拝堂」と呼ばれる聖母マリアの受胎告知礼拝堂は、壁と天井に多数の鏡が用いられ、バロック様式の豪華な装飾が必見です。現在は、主にコンサートホールとして使用されています。

現在、クレメンティヌムは、主として国立図書館として利用されています。写真は一般学習室です。

ラングドンが到着したのは午前9時55分でしたが、早朝に到着するアメリカからの観光客を見込んで午前7時に開館していたクレメンティヌムに無事入館でき、キャサリンがEメールを送信したときも開いていたことが判明します。

営業時間や入場料については、こちらを参照してください。本作のヒットに伴い、見学ツアーも好評のようです。
25 首謀者
ランダムハウス・タワーでは、夜間警備員のマーク・S・ドールがロビーのセキュリティ・デスクの後ろで持ち場に就いていました。

午前3時48分、黒のSUVが正面玄関前に停まり、フォークマンが運転席から飛び出してきます。カードキーを忘れた様子を見て、ドールは自動ドアを開け、フォークマンを招き入れます。

その直後、オージェとチンバーグの二人組は、フィンチの指示で技術担当者が何をどこまで知っているかを調べるため、フォークマンのカードキーを使ってランダムハウス・タワーに入り、ドールを拘束してマスターカードキーを奪い、上階へ向かいます。
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フォークマンは、4階のデータ・セキュリティ・センターに行くと、アレックスからラングドンの携帯電話の信号がヴルタヴァ川のど真ん中で消えたことから殺されたと思いこんでしまったが無事が確認できたと知らされて安堵し、コンピューターラックの迷路を進みました。

いくつものモニターが半円状に並び、壁に1と0の海に沈みかけている外洋船が描かれた大きな額入りの絵が掛かる、ワークステーションにアレックスと並んで腰かけたフォークマンは、ドアの開閉時の電子音がしたのに誰も現れず、スパイ小説で読んだことのあるレーザーマイクの青い光点が見えたことから、進入した誰かが隠れて自分たちの会話を聞いていると気づきます。

フォークマンは、ハッキング犯がロシア人科学者たちが結成したライブラリー・ジェネシス(LibGen)だと知らされたかのように演技しながら、モニターにメッセージを打ち込んでアレックスに真の首謀者を尋ねます。アレックスがキーボードを打ち込んだのは「In- Q -Tel」という聞いたことのない名前で、更に打ち込んだ短い頭文字を見て、フォークマンは衝撃で言葉を失います。

フォークマンが口にした偽情報を聞いたチンバーグは、技術者がへまをやらかしたと安堵し、中継して同じ話を聞いていたフィンチからの指示で撤退します。二人組はドールに今日見たことを他言すれば家族に危害が及ぶと暗示して立ち去ろうとしますが、ドールは、機転を利かせて正面玄関の回転ドアの開閉を操作し、二人組を回転ドアのガラスの牢獄に閉じ込めます。

ドールの安否を確認しに1階に降りたフォークマンが目にしたのは、回転ドアの傍の床で手錠を掛けられ憤怒の表情を浮かべた二人の男でした。フォークマンは、ウィンクして「悪者は必ず負けるんだ」と言うのでした。
26 クレメンティヌム
ラングドンが急いで向かったチケット売り場は、マリエーンスケー広場から入口を入って左へ進み、向こうのアーチのある回廊の右側にあります。

ラングドンは全館入場券を買いましたが、《悪魔の聖書》が特別展示されているバロック様式の図書館に入るには見学ツアーに参加する必要があり、ツアーの入口はここです。

ラングドンが通り抜けたという凝った装飾の通路というのはここではないでしょうか。

実際のツアーでは、先ほどのツアー入口からこの部屋を抜けて進みます。こちらの情報によれば、現在はここがチケット売場になっているようです。ツアーの内容は、こちらが詳しいようです。

更に階段のある部屋を抜けて、こちらの螺旋階段を上ります。

この部屋に上がり、螺旋階段は更に上に繋がっていますが(先に紹介した天文塔に通じています)、隣(写真奥)の部屋に向かいます。

この天文学関係の道具等が展示された部屋を通り抜けます。

更にバロック様式の図書館に通じる前室を通ります。

ラングドンが足早に通り抜けたという図書館入口のドアです。

そして、こちらが、かつて作家のホルヘ・ルイス・ボルヘスが「ヨーロッパ一優美な図書館」と評した、バロック様式の図書館です。ラングドンは奥まで足を踏み入れましたが、ツアーでは柵の手前までしか入れません。

ラングドンが息を呑んだという細長い空間は、天井にはフレスコ画が描かれ、だまし絵の技法により日光が建物を通り抜けて差し込み、薄青い空を飛ぶ智天使が本当に浮かんでいるかのようで、天井を支える高さ10m近い壁の本棚には2万冊以上の図書が収蔵され、羊皮紙の匂いが漂い、手がこんだ寄せ木張りの床には特大の古い地球儀が整然と並んでいます。

奥に進むと、観光客に囲まれた、立方体の形をしたプレキシガラスの展示ケースに収まった《悪魔の聖書》がありました。因みに、2007年の展示は、国立図書館内に作られた特設の展示場所で行われたようです。

ケースの前に到着したラングドンは、写本には殆ど目もくれず、人混みの中にキャサリンの姿を捜すのでした。
27 再 会
火災だと叫んで観光客を出口に誘導しているパヴェル警部補に気づいたラングドンは、昨日の見学時にキャサリンに教えた、2階の回廊へ通じる隅の書棚の隠し階段に向かいます。上巻352頁によれば、書棚の一部を手前に引くと、蝶番で連結された部分が開いて奥に螺旋階段があるとされています。

書棚の前に近づき手前に引いてもびくともしません。しかし、ラングドンがもしかするとと思いながら小声でキャサリンの名前を呼ぶと、次の瞬間、書棚が手前に開いたのです。視線の先には涙を浮かべたキャサリンの姿があり、ふたりは狭い階段室の闇の中で再会を果たし、抱き合うのでした。

投稿日現在、現地の見学ツアーに参加しても図書館の奥まで入ることはできないため、第5旅に登場するフィレンツェにあるヴェッキオ宮殿のアルメニアの地図の隠し扉(第18節②)やフランチェスコ1世の書斎の隠し扉(第19節④)のように、蝶番のある書棚を確認するすべはありませんが、中央の円柱状の部分の肖像画の下をご覧ください。鍵穴とノブの付いた扉がありますね。この扉の向こうにこそキャサリンが隠れていた螺旋階段があるのではないでしょうか。

因みに、入口側の同じ場所にも、同じように扉があります。

キャサリンは、朝、アレックスのボイスメールを受け、折り返しの電話でアレックスから、ランダムハウス社のすべてのサーバーから自分の原稿が消去されたこと、ラングドンの携帯電話の位置情報がヴルタヴァ川の真ん中で途絶え、フォークマンも行方不明となったことを聞き、誰かが三人のことを狙っているからどこか安全な場所に隠れるようにと言われたようです。その後、火災警報が鳴って避難し、近くのこの場所に来て隠れたこと、アレックスから通話は盗聴されると言われたことから、ラングドンは生きていると信じて、暗号メッセージを送って携帯電話を捨てたことを話しました。
28 奇 策
すべての観光客が出ていった後、ラングドンが身を隠しているとパヴェルがにらんだ場所は、キャサリンが前日に「模造」と表現した、行く方法がわからない2階の回廊でした。

案内係から隠し階段の存在を聞いたパヴェルは、図書館の封鎖を命じます。

静寂の中、パヴェルは、案内係が隠し階段があると言っていた部屋の隅の書棚に近づき真鍮の取っ手を引いて開けようとしますが、1センチほど開いただけで取っ手が外れてしまい、書棚のドア目掛けて銃の引金を引きます。

パヴェルが目を付けたのが、奥の書棚に立て掛けてあった古めかしい梯子と《悪魔の聖書》の展示ケースで、ケースを土台にして梯子を架け、回廊に登って上から攻撃しようと考えます。

一方、頭上の落とし戸を開けて回廊から下の様子を伺ったラングドンは、展示ケースを押すパヴェルとそばの梯子を見て、その意図を察知します。この回廊には、原作者のダン・ブラウンも2025年11月にクレメンティヌムを訪れた際に上らせてもらったようです。残念ながら彼の周囲に写る回廊にはラングドンが様子を伺った落とし戸のようなものは見当たりませんね。

ラングドンは、ヤン・ヒーベルが1724~27年に描いたという天井のフレスコ画の逆巻く雲の中に煙感知器を見つけると、キャサリンのバックの中の携帯電話充電器とグラノーラバーのアルミ箔で火を熾し、煙を使ってこの場を切り抜けるという奇策に出ます。

その際、火の燃料としてくべたのは、キャサリンがラングドンに読んでもらおうと今朝ホテルのビジネス・センターでプリントアウトした、最後に残った彼女の原稿だったのです。
29 解 放
パヴェルがいよいよ展示ケースに登ろうかというとき、黒い煙が立ち上り、火災報知器が鳴り始めます。案内係が図書館のドアを解錠し、煙の出どころを確認するため入ってきます。ここで余談ですが、細長い図書館の中程右側、入口から数えて3番目と4番目のカーテンで仕切られた奥、窓ではない何かがありそうな気になるスペースです。

パヴェルは、咎める案内係を無視して梯子を登り、ラングドンが出てくれば撃ち殺そうと、回廊の鉄柵を乗り越えようとします。

そのとき、入口から黒髪の優雅な美女が現れ、颯爽と向かってくると、拳銃を構えるパヴェルを一喝して制止します。ネーゲル大使から緊急命令を受け、警護の海兵隊員を伴って駆け付けたダナ・ダニェックでした。

パヴェル警部補は待合室に連行され、ラングドンは、キャサリンを伴って階段室から出て、ようやく解放されます。
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アメリカ海兵隊員に先導され、ラングドンとキャサリンが中庭とアーチ形通路を通り抜けて出た場所は、正面に市庁舎が建つマリアーンスケー広場でした。大使館がよこしたリムジンに乗るように促されますが、ラングドンは、大使館の紋章を見て今朝の記憶がよみがえり、ためらいを覚えながらキャサリンと共に乗り込むのでした。

ダナは、サーシャ・ヴェスナとマイケル・ハリスの身の安全が心配だというラングドンの話をネーゲル大使に電話で報告すると、大使の命でサーシャのアパートメントに向かわされます。ダナが電話をかけた市庁舎の角には、両方にラディスラフ・サルーンによる像が立っていますが、南西角には第6節で紹介したラビ・レーヴの像があり、北西角には鉄の騎士と呼ばれる像が立っています。

ラングドンが車に乗り込むのをためらったのは、ホテルの部屋に大使館から贈られたフラワーアレンジメントに盗聴器が仕掛けられていたことに気づいたからでした。悪夢の再現に始まる一連の出来事がすべてキャサリンの本をめぐって起こっていることから、ラングドンは、キャサリンに何を発見したのか全てを明かしてほしいと頼むのでした。
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今回の投稿での旅はここまでです。無事再会を果たしたラングドンとキャサリンですが…。ネーゲル大使は敵なのか味方なのか。新たな展開がふたりを待っているようです。
次回は、第2部からいながら旅を続けます。